近年、けがや病気を治すための新しい手段として、幹細胞治療が多くの医療現場で活用されています。
そんな幹細胞治療が、実は若返り効果も期待できると、美容業界で注目を集めていることをご存じでしょうか?
本記事では、幹細胞治療で若返りできる理由を、かかる費用や詳細な治療法とともに解説していきます。
世界的に注目を浴びている、最新のエイジングケア技術に興味のある方は、ぜひご覧ください。
幹細胞治療とは、人間の脂肪や骨髄の中に存在する、組織幹細胞とよばれる細胞を用いて、体の傷ついた組織や機能を修復する治療のことで、再生医療ともよばれます。
組織幹細胞には、軟骨や脂肪、神経など、特定の部位を構成する細胞に分化する能力があり、
損なわれた組織の細胞に再生する可能性があります。
この幹細胞治療により、慢性的な痛み、心不全、パーキンソン病、肝機能障害、糖尿病、変形性関節症といった、けがや病気が改善する可能性があります。
また、幹細胞を用いて皮膚の細胞にはたらきかけることで、美しい肌を手に入れるといった美容の面でも幹細胞治療は注目を浴びています。
まだまだ発展途上である幹細胞の分野ですが、アジア諸国ではシンガポールや日本での研究が進んでいます。
この背景の一つに、人口の高齢化が挙げられます。
ユーロモニター・インターナショナルの調査では、2040年までに、日本・韓国・シンガポールが世界の上位高齢人口国の上位5か国に入ると言われているほどです。
こうした環境下で、若返りの効果も期待できる幹細胞治療が注目され、研究が進んでいるというわけです。
特に日本では、京都大学の山中伸弥教授が世界で初めてiPS細胞の作製に成功し、2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞したことが知られています。
この山中教授の成果を受け、日本国内では再生医療にかかわる法律や制度が整備されるようになりました。
再生医療を用いた製品の臨床開発を進めやすい環境が、整いつつあるということです。
実際に、特許出願動向をみると、ヒト幹細胞を用いた技術の自国外への特許出願件数は、アメリカに次いで日本が世界2位という結果が出ています。
また2014年には、世界で初めて、再生医療に関する「条件及び期限付承認制度」が制定されました。
この制度によって、条件・期限つきであれば、再生医療による新しい治療法の承認にかかる時間が大幅に短縮され、より早く患者に治療を届けられるようになったのです。
これらのことからも、日本はアジアのなかで幹細胞研究先進国だということがわかるでしょう。
今後も、日本国内での再生医療および幹細胞研究はどんどん進んでいくことが期待できます。
シンガポールでは、国をあげて科学技術分野に力を入れており、生物科学分野の研究開発拠点である「バイオポリス」や、国内最大の科学技術研究庁「A*STAR」を有しています。
これらの研究所では日々さまざまな研究が進んでおり、幹細胞の研究ももちろん例外ではありません。
なかでも特にシンガポールでの研究が目立つのは、ES細胞(ヒト胚性幹細胞)です。
日本の特許庁の調査によれば、2008年当時、幹細胞に関連する論文のうち、ES細胞を扱ったものの割合がもっとも多かった国がシンガポールで、その割合は30%以上。
対し、日本は0.4%でした。
この差異の理由の一つとして、ES細胞の作製に欠かせない「ヒト胚」に対する各国の考え方の違いがあります。
シンガポールでは、研究目的でのヒト受精胚の作製・利用および、治療目的でのクローン胚の作製が認められています。
一方、日本では、研究目的であれば、生殖において人になり得ない「余剰胚」の利用は認められていますが、クローン胚の利用はいかなる目的においても認められていません。
日本よりもシンガポールのほうが、ヒト胚に関する規制が易しいため、研究が進んでいることが考えられるというわけです。
実際の研究例としては、2023年6月に発表された、シンガポールとスウェーデンの研究チームによる、視力を回復できる幹細胞治療の開発が挙げられます。
網膜に含まれる「ラミニン」というタンパク質とともにES細胞を増殖させることによって、ES細胞を光受容体の前駆細胞に変換することができたという例です。
これによって、損傷した網膜をES細胞で修復できる、新たな治療法の確立が期待できるようになりました。
なお、日本におけるES細胞の研究はシンガポールと比較するとあまり活発ではありませんが、それが必ずしもネガティブとはいえません。
なぜなら、日本ではiPS細胞の研究が進んでいるからです。
ES細胞は、受精後のヒト胚から採取する関係上、ヒト胚の生命に影響を及ぼす可能性もあり、倫理面で実用化は禁止されています。
その点、iPS細胞であれば、皮膚や血液といった採取しやすい体細胞から作ることができますし、患者自身の体細胞から作製し移植すれば、拒絶反応のリスクも抑えられます。
日本の研究者が世界で初めて作製したiPS細胞は、従来の幹細胞分野が抱えていた倫理面の課題をクリアし、尚且つ患者への負担も軽減できる画期的な細胞なのです。
iPS細胞もまだ実用化には至っていませんが、日本国内ではほかにもさまざまな幹細胞の研究が進んでいます。
幹細胞治療で若返りできるのには、以下の3つの理由があります。
幹細胞には、若々しい肌を維持するのに欠かせない、線維芽細胞を増加させる可能性があります。
線維芽細胞は、肌の奥の真皮層にある細胞です。
肌を若々しく保つのに必要な、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸といった成分を生成する役割を担っています。
この線維芽細胞が老化や紫外線によって衰えると、必要な成分が十分に生成されなくなり、肌のしわやたるみが目立つようになってしまいます。
線維芽細胞は20歳以降少しずつ減っていくので、そのまま放置しては肌の若々しさが損なわれていくばかりです。
そこで必要なのが、幹細胞治療です。
幹細胞には、線維芽細胞を刺激して強くする効果も期待できます。
正常に働く線維芽細胞が増え、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸が生成されるようになると、肌が若返るというわけです。
線維芽細胞が増えてコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸が生成されると、肌質の改善も見込めます。
年齢を重ねると減っていくコラーゲン、エラスチンと、シミや小じわ、毛穴の開きといった肌質の悩みは、切っても切り離せない関係です。
幹細胞治療によって線維芽細胞が増えればコラーゲン、エラスチンも増加するので、必然的に上記の悩みも改善され、若々しさにより磨きがかかります。
幹細胞治療には、病気の予防効果も期待できます。
本来、細胞は自己修復機能を有しているので、痛んだり古くなったりした際も自ら修復することが可能です。
しかし、劣化や老化があまりにも進行していると、自己修復機能が正常に働かなくなり、回復できなくなってしまいます。
幹細胞治療なら、病気として影響が現れる前に、そうした問題のある細胞を修復し再生できる可能性があるので、元気な体をより長く保っていられる可能性があります。
幹細胞治療は、投与方法によって「点滴療法」と「局所投与療法」の2種類に大きく分けることができます。以下では、それぞれの投与方法について解説いたします。
点滴療法は、点滴を使って、幹細胞を全身に行き渡らせる投与方法です。
慢性的な痛みの治療や、ヒト自己活性化NK細胞による免疫力の向上など、さまざまな症状へのアプローチで使われています。
なお、このあと紹介する局所投与療法と比較すると費用が高い傾向にあります。
これは、注入した幹細胞が毛細血管内で詰まってしまうことのないよう、幹細胞同士を離す作業が必要になるためです。
注射を使って、気になる箇所にピンポイントで幹細胞を注入するのが、局所投与療法です。
関節の痛みや慢性創傷、美容面のお悩みの解消などを目的に、気になる箇所にだけ幹細胞を届けることができます。
幹細胞治療に似た治療方法として、幹細胞培養上清液療法(かんさいぼうばいようじょうせいえきりょうほう)というものがあります。
幹細胞治療では、細胞の修復・再生に幹細胞が用いられるのに対し、幹細胞培養上清液療法では、幹細胞を培養した際の上澄み液に含まれる、生理活性物質しか使用されません。
つまり「幹細胞そのものが含まれているかどうか」が大きく異なるということです。
なお生理活性物質には、細胞を活性化させる成長因子が含まれており、幹細胞同様、傷ついた組織や細胞を回復させることができます。
ほかに違う点は、幹細胞が自分自身の細胞であるのに対し、培養上清液は、他人の幹細胞から抽出した成分だということです。
それゆえ、幹細胞培養上清液療法は幹細胞治療と比べると、どうしても感染などのリスクは高くなってしまいます。
幹細胞治療では、自身の細胞を使うので、相対的にリスクは低くなるというわけです。
さらに両者は、日本国内における制度上の扱いにも違いがあります。
幹細胞治療は、特定認定再生医療等委員会という、厚生労働省から認可を受けた組織が許可したクリニックでのみ治療行為が可能です。
一方で、幹細胞培養上清液療法は、厚生労働省からの認可がなく、法的認可がない、試薬つまり正式な「薬」ではない治療法になります。
幹細胞培養上清液療法の主な種類を以下にまとめました。
幹細胞培養上清液療法の一例
いずれの治療法も、主に若返りを目的に利用されています。
幹細胞培養上清液点滴療法は、培養時の上澄み液を点滴によって投与する方法です。
そして幹細胞培養上清液局所投与療法では、上澄み液を注射によって投与します。
特に、気になる部分にだけ局所的に成分を投与したい場合に用いられます。
またこれら2つの療法は、より効果を高めるために併用することも可能です。
若返り効果を期待できる幹細胞治療ですが、「リスクはないのかな……」と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
注射や点滴に起因する内出血や痛みといった、ほかの一般的な注射療法でも発生しうるリスクや、治療直後の関節痛は、幹細胞治療においても同等に起こりえます。
幹細胞治療は一般的には安全性が高いと考えられていますが、治療の際に点滴した幹細胞の数が多すぎて、血管を塞ぐといった事例が起こる可能性はゼロではないので、幹細胞治療は必ず信頼できるクリニックで施術してもらいましょう。
幹細胞治療は、皮膚や皮下組織を再生、修復することで、外見の若返りに貢献する可能性があります。
自分自身の組織による再生効果の為、自然な若々しさをサ ポートしてくれ、さらに、肌のトーンや質感を改善することも期待できます。
傷付いた組織を修復し、老化を遅らせる可能性のある幹細胞は、理想的なアンチエイジング治療と言えます。
幹細胞治療にご興味のある方は、医療法人社団紘朗会 再生医療部門までご相談ください。
当院では、根本的なエイジングケアを目指しており、幹細胞治療と、生物学的同一ホルモン補充療法やペプチド療法を組み 合わせた治療を提供しています。