幹細胞は、再生医療に用いられることから、その言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、具体的にどのような機能をもつ細胞なのかまでは、ご存じないのではないでしょうか。
そこで本記事では、そんな幹細胞の機能や種類を、詳しく解説します。
幹細胞の概要を押さえたうえで、治療を検討したい方は、ぜひご覧ください。
幹細胞とは、血液や神経、表皮などの、さまざまな組織や臓器に分化できる細胞のことです。
私たちの身体を構成する数多くの細胞は、生体を維持するために、日々誕生と死滅を繰り返しています。
幹細胞には、こうした仕組みを保つために、失われた細胞を再生し補充するという役割があります。
細胞が失われたままの状態では、毎日を健康的に過ごすことが難しくなるため、幹細胞は「人間の身体を構成する基礎」ともいえる重要なものなのです。
さらに、現在では全身の組織の修復を加速し、自然な若々しさをもたらすこと等で「幹細胞治療」が注目を集めています。
幹細胞治療では、ヒトの骨髄や脂肪に存在する「組織幹細胞」が用いられます。
組織幹細胞の概要は後述しますので、そちらをご覧ください。
私たちの健康を支える幹細胞は、残念ながら年齢を重ねるにつれてその数が減少する傾向にあります。特に、骨髄の組織幹細胞は、新生児時に比べて80代では約1/200にまで減少することが知られています。この幹細胞の減少は、老化の重要な要因の一つと考えられています。*1
幹細胞の数の減少が、体の各部位の修復能力を低下させ、健康問題のリスクを増加させる可能性があるとされています。このため、年齢を重ねると、肌の問題が顕著になることや、疾患にかかりやすくなることがあるとされています。この課題に対応するために、幹細胞を活用した新たな治療法の開発が進められており、これが将来的に老化の進行を遅らせ、生活の質を向上させる可能性があると期待されています。
*1 出典:一般社団法人 日本再生医療協会
再生医療は、培養・増殖した幹細胞を体内に注入し、傷んだ組織や臓器の機能の修復が期待できます。
これまでの医療では治療が難しかった病気に対しても、有効性を示しつつあるところが特徴です。
変形性膝関節症や糖尿病、心不全、パーキンソン病、肝機能障害、慢性疼痛のような怪我や病気にも効果が期待できます。
年齢を重ねると幹細胞の数が減少するものの、現在では自然に増やす方法は見つかっていません。
ですから、死滅した細胞を補う最新の再生医療は、さまざまな可能性を秘めているのです。
医療、健康増進や再生美容の分野で注目を集める幹細胞ですが、一体どのような能力をもっているのでしょうか。
ここでは、幹細胞に備わる2つの機能を解説します。
幹細胞は分裂を経て自分と同一の細胞を生成する能力があります。
これを「自己複製能」と言います。
言い換えると、幹細胞が幹細胞に分身する能力です。*2
幹細胞には、自ら分裂・増殖して幹細胞の数を一定に保つ自己複製能が備わっています。
*2 出典:一般社団法人 日本再生医療協会
幹細胞は自分とは異なる様々な細胞に変化する能力があります。
これを「分化能」と言います。
分化能が備わっていることによって、血液や神経、骨、筋肉などの異なる種類の細胞に分化できます。
この能力により、治療対象の組織や器官の再生を促進することが期待され、また損傷を受けた組織の修復や痛みの軽減に寄与する可能性が期待できます。
幹細胞は、その役割の違いによって「組織幹細胞」と「多能性幹細胞」の2つのタイプに分けられます。
それでは、以下でそれぞれの役割と具体的な幹細胞の例を見ていきましょう。
特定の組織や臓器で死滅した細胞の代わりを造り続けているのが、「組織幹細胞」です。
言い換えると、私たちの体の中に自然に存在し、働いている幹細胞を組織幹細胞といいます。
例えば、骨髄には造血幹細胞があり、赤血球や白血球などの血液細胞を作っています(多分化能)。その他、皮膚や肝臓など様々な場所で見つかっています。骨折が治るのも、髪の毛を切っても伸びたり、抜けてもまた生えてくるのは、それぞれの場所に存在する組織幹細胞の働き(自己複製能)のおかげです。*3
そんな組織幹細胞は、体内の存在する場所によって種類が異なります。
その一例として、以下の3つを解説します。
*3 出典:幹細胞情報データベースプロジェクトSKIP(国立研究開発法人日本医療研究開発機構の事業)
赤血球や白血球、血小板のもととなる細胞を、「造血幹細胞」といいます。
造血幹細胞が骨の中心部にある骨髄という組織の中で盛んに細胞分裂をして、赤血球・白血球・血小板がつくられます。
造血幹細胞は、赤血球・白血球・血小板に成長する性質と、細胞分裂によって自らと同じ細胞を増やして数を維持する性質とを兼ね備えています。造血幹細胞が赤血球・白血球・血小板に成長する過程を「分化」、細胞分裂によって自らと同じ細胞を増やす能力を「自己複製」といいます。*4
*4 出典:がん情報サービス(国立研究開発法人国立がん研究センタが運営)
神経幹細胞は、神経を構成する神経細胞に分化しますが、神経細胞に分類されないグリア細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトにも分化します。つまり、神経を構成する細胞各種に分化が可能な幹細胞です。*5
神経幹細胞は、他の幹細胞と同様に自己複製能力、分化能を持っています。すでに脳虚血、脊髄損傷、パーキンソン病などの神経疾患の治療において、神経幹細胞の移植が行われ、効果が報告されています。自己移植が可能である事から、再生医療では重要視されています。*6
*5,*6 出典:国際幹細胞普及機構
幹細胞のもう一つのタイプである「多能性幹細胞」は、体内の様々な細胞に分化できます。
これらは、幹細胞が存在している特定の組織や臓器に限定されることなく、広範な細胞タイプに分化することが可能です。*7 これが組織幹細胞との主な違いです。多能性幹細胞には、自然に存在する胚性幹細胞(ES細胞)と、人工的に作り出された誘導多能性幹細胞(iPS細胞)などがあります。*8
*7 出典:再生医療ポータル(再生医療学会が運営しているサイト)
*8 出典:再生医療ポータル(再生医療学会が運営しているサイト)
胚性幹細胞ともよばれる「ES細胞」は、分裂したヒトの受精卵から作られます。
もっと具体的にいうと、受精卵のなかから、胎児を形成する「内部細胞塊」という細胞集団を取り出し、特別な条件のもとで培養することで生成されるのです。
ES細胞の多くは、不妊治療で不要となった「余剰胚」を利用して生み出されます。*9
また、ES細胞には、新しい生命を形成する受精卵の能力が備わっているため、体内のさまざまな組織や臓器に分化できるといわれています。
今よりももっとES細胞の研究が進めば、関節リウマチやウルリッヒ病などの難治性疾患に対する幹細胞治療の実現も、夢ではありません。
しかし、ES細胞は、将来一つの命となりうる受精卵を壊して作り出すものですので、倫理的な問題を含みます。
日本では、文部科学省が2001年に公示した、「ヒト胚性幹細胞の樹立及び使用に関する指針*10」によって、研究目的による使用しか容認されていません。
この使用指針案、および「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律*11」によって、生殖細胞を用いてヒト胚を作成することや、ヒトクローン胚を体内移植することは禁止されています。*9
*9 出典:再生医療ポータル(再生医療学会が運営しているサイト)
*10 出典:ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針
*11 出典:ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律
「iPS細胞」は、ヒトの皮膚のような体細胞に特定の遺伝子を組み込んで作られます。
2006年に京都大学の山中伸弥博士らが、世界で初めてヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作り出すことに成功しました。
受精卵を壊して生成するのではなく、成熟した細胞を使用するため、ES細胞と比べると倫理的な課題の指摘が少ないのが特徴です。
私たちの体内にある細胞は、成熟すると自分と異なる種類には分化できません。
しかし、遺伝子操作を加えると、ほかの組織や臓器に成長できる「未分化の細胞」に生まれ変わります。
ですが、細胞に成長しきれない未分化の細胞が残ってしまうことで、がん化のリスクがあるとも指摘をされています。*12
再生医療の発展はもちろん、病気の原因調査や新薬の開発など、より多くの人々を救うための今後の研究が進められています。*13
*12 出典:科学技術振興機構(がん化しないiPS細胞作製に成功 安全な再生医療応用に期待)
*13 出典:再生医療ポータル(再生医療学会が運営しているサイト)
幹細胞は、「ヒト」「動物」の2つの種類に分けられ、それぞれ特徴が異なります。
ここでは、2つの幹細胞を紹介します。
「ヒト幹細胞」とは、その名の通りヒトから採取した細胞のことです。
自分自身から採取した細胞と、他者から採取した細胞を用いる2つの方法があります。
患者さま自身から採取した細胞を用いる場合は、アレルギー反応のような副作用が少なく安全性が比較的高いと一般的に考えられています。
一方、他者から採取した細胞は、副作用を引き起こすケースが比較的高いと考えられています。
ここで記載する「ヒト幹細胞」は、自分自身から採取した細胞を指します。
ヒト幹細胞は、使用される目的によって採取する場所が異なります。
たとえば、白血病の患者に骨髄移植する場合は、腰の骨から造血幹細胞を採取し、肌の治療に幹細胞を用いる場合は、腹部や太ももの皮下脂肪から採取するのが一般的です。*14
*14 出典:厚生労働省(ヒト幹細胞の定義)
ヒトの皮膚幹細胞と似た構造をもつのが「動物幹細胞」です。
羊や馬、豚の胎盤、または毛根から採取されるのが一般的です。
しかし、動物幹細胞の培養液は、アレルギーを引き起こす可能性が指摘されています。
このことから安全性に疑問符がつけられており、日本国内ではなかなか普及に至っていません。
幹細胞治療の効果は、全身の症状や病気によって異なります。
しかし、体内に注入された幹細胞は、単に吸収されるのではなく、損傷した組織の修復や再生を促進するために活動します。
細胞という身体の根本的な部分の治療にあたります。
ただし、幹細胞の治療効果の持続性は、使用される幹細胞の種類、治療方法、疾患の特性、および患者の個々の生物学的条件に依存するため、すべてのケースで一定の結果が得られるわけではありません。
幹細胞を用いた再生医療にご興味のある方は、医療法人社団紘朗会 再生医療部門までご相談ください。
当院ではエビデンスに基づいた治療を厳選し、包括的な新しい治療方針で一人ひとりのお悩みに合わせた再生医療をご提供いたします。最良の結果を最適化するために、生物学的同一ホルモン補充療法やペプチド療法などの内服療法と幹細胞療法を組み合わせて使用いたします。
ここまでお話ししてきた通り、幹細胞は加齢とともに減少してしまいますが、できる限り長く健康的に保ちたいですよね。
しかし、現在では幹細胞を健康的に保つための方法は、確立されていません。
そんななかでも、日頃の過ごし方を意識すると、結果として幹細胞の健康につながる可能性があります。
具体的には、以下のようなことに気をつけて過ごすとよいでしょう。
【幹細胞を健康的に保つ生活習慣】
この先も、長く健康的で若々しい自分で過ごしたいと思われる方は、今日から試してみてください。
今回は、幹細胞の機能や種類を詳しく解説しました。
幹細胞は、体内のあらゆる組織や臓器に分化できます。
ほかの体細胞とは異なり、自己複製能と分化能が備わっているのが特徴です。
また、幹細胞には「ヒト」「植物」「動物」の3種類がありますが、動物由来のものは、安全性の観点から日本国内では一般に流通していません。
幹細胞治療は一般的には安全性が高いと考えられていますが、治療の際に点滴した幹細胞の数が多すぎて、血管を塞ぐといった事例が起こる可能性はゼロではないので、幹細胞治療は必ず信頼できるクリニックで施術してもらいましょう。
医療法人社団紘朗会 再生医療部門は、厚生労働省から認められた医療機関として、幹細胞を用いた再生医療を提供しております。*15
幹細胞治療にご興味のある方は、当院までご相談ください。
医療法人社団紘朗会 再生医療部門ではエビデンスに基づいた治療を厳選し、包括的な新しい治療方針で一人ひとりのお悩みに合わせた再生医療をご提供いたします。最良の結果を最適化するために、生物学的同一ホルモン補充療法やペプチド療法などの内服療法と幹細胞療法を組み合わせて使用いたします。
*15 出典:厚生労働省
①治療方法
ご自身の脂肪組織に含まれている幹細胞を取り出し、培養した上で、患部に局所注射又は点滴にて注入する治療法です。
②副作用リスク
脂肪採取時:内出血、腫脹、術後感染、術後瘢痕、注射部位の痛みなどを伴う可能性。
幹細胞投与時:注射部位の痛み、アレルギー反応、肺塞栓などを伴う可能性。
③連絡先
医療法人社団紘朗会 再生医療部門
東京都港区南麻布4丁目14-6 プレシャス18 5階
TEL:03-6277-4650
④費用
本治療は保険適用のない自由診療となります。税込み165万円程度(診断により変動する可能性があります)。
詳細はご相談ください。
⑤入手経路
幹細胞は提携CPCにて培養いたします。
⑥効能に関する国内の承認機器・薬剤の有無
効能に関する国内の承認薬剤はありません。
⑦安全性に関する諸外国の情報
安全性に関する諸外国の報告はありません。
※重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。
⑧未承認である旨
この治療で使用される薬剤は医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認薬です。
⑨未承認薬・機器
未承認薬・機器には、公的救済制度(医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度)の適用はありません。