慢性疼痛の治療法として注目を集める幹細胞治療の概要を解説
慢性疼痛は、痛みの範囲が広く原因が多岐にわたることから、対処療法でしか治療できませんでした。 しかし近年では、根本治療が期待できる治療法として、“幹細胞治療”が注目されています。 本記事では、従来とは違う施術で慢性疼痛の根本治療が期待できる、幹細胞治療について詳しく解説します。 慢性疼痛とは 慢性疼痛は、国際疼痛学会(IASP)によって、以下のように定義されています。 Pain is an unpleasant sensory and emotional experience associated with, or resembling that associated with, actual or potential tissue damage. Chronic pain is pain that persists or recurs for longer than 3 months. 引用元:Definitions of Chronic Pain Syndromes これまでは、疼痛を発症してから6か月を超えて症状が持続する病態を指していましたが、現在は3か月以上の病態を、慢性疼痛とよぶことが多いようです。*1 慢性疼痛を引き起こす原因は多岐にわたりますが、侵害受容性疼痛、神経の痛みによる疼痛、心理的な影響による疼痛の主に3つに分類できます。 *1 出典:厚生労働省「慢性疼痛治療ガイドライン」p.16 慢性疼痛へ幹細胞はどう作用するの? 幹細胞による慢性疼痛へのはたらきかけを確認する前に、私たちの身体の仕組みについて、知っておきましょう。 人間の身体は、200種類以上の約60兆個もの細胞が集まってできており、これらの細胞一つひとつには役割があります。 しかし、それぞれの細胞の寿命は短く、日々死滅と誕生を繰り返しています。 組織を保つための、失われた細胞を代わりとなる細胞を生み出したり、不足している細胞の機能を補充したりする役割を担っているのが、“幹細胞”です。 幹細胞は、体内のさまざまな細胞に変化できる“分化能”と、同じ能力の細胞に分裂する“自己複製能”とよばれる2つの能力をもっています。*2 分化能や自己複製能をはじめとする、幹細胞の主な機能と特徴を以下にまとめました。 幹細胞の主な特徴 分化能:自分とは異なるさまざまな細胞に変化する能力 自己複製能:分裂によって自分と同一の細胞を生成する能力 ホーミング:体内の傷ついた箇所にはたらきかけ、修復する機能 パラクリン作用:炎症や痛みを抑え、体内の最適化に寄与する作用 この幹細胞がもつ能力を最大限活用した幹細胞治療によって、損傷した組織や細胞の再生と修復を図ることで、慢性疼痛の根本治療が期待できるというわけです。 *2 出典:一般社団法人日本再生医療協会 幹細胞治療とは 幹細胞治療とは、幹細胞を用いた再生医療のことです。 幹細胞治療は、患者さまの脂肪組織から抽出・培養した幹細胞を再び体内に戻して、損傷した組織の再生を図り、健康状態の改善を望む治療法です。 患者さまご自身の幹細胞を、またご本人の体内に投与するため、信頼性・安全性が高いとされています。*3 *3出典:日本再生医療協会 幹細胞治療が慢性疼痛へ作用する仕組み ここまでのご説明で、幹細胞がもつ能力や、幹細胞治療の概要はご理解いただけたのではないでしょうか。 幹細胞の能力であるホーミングによって、体内の傷ついた部位にはたらきかけ、慢性疼痛を引き起こす箇所が修復する可能性があります。 また、パラクリン作用で炎症や痛みを抑えることで、体内の最適化も期待できます。 幹細胞の能力を最大限に活用した治療のため、身体の機能の再生、生体機能の回復が期待でき、慢性疼痛の根本治療が望めるというわけです。 幹細胞治療で慢性疼痛のどのような痛みに効果が期待できるのか? 幹細胞治療の効果が期待できる慢性炎症疾患は、慢性疼痛を引き起こす起因が炎症であるケースと、自己免疫性の慢性疾患であるケースです。 幹細胞は、抗炎症作用ももっているため、慢性疼痛の原因が炎症である場合には、痛みの軽減に寄与する可能性があるといわれています。 炎症を抑え、炎症を引き起こしている周囲の組織を保護する効果が期待されるわけです。 また、幹細胞には、免疫系への影響によって、過剰な免疫応答を調整する可能性があるともされています。 これにより、自己免疫性の慢性疾患を原因とする疼痛への良い影響が期待できます。 なお、幹細胞治療は、医学的な認可・規制のもと提供される治療であるため、厳しい審査を通過した医療機関のみでしか受けられません。 患者さまにとって、一定の信頼性・安全性が担保されているといえます。 たとえば、医療水準の高いシンガポールでは、保健科学長庁が幹細胞治療を監督し、治療の安全性や効果を保証するために、ほかの医療機関と連携しています。...
2024.08.21